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地下鉄廃熱利用による地域熱供給事業

山 田  繁 晴

(株)札幌エネルギー供給公社
技術部部長代理

1. はじめに
 
都市とは限られた空間の中で多くの人々が大量のエネルギーを消費しながら様々な活動を行う一つの人工的な系(システム)であり,文明の表徴である。そして人間が消費するエネルギーは,文明の進歩に伴い飛躍的に増大しつつあり,従って,都市が存続・発展するためには大量のエネルギーが必要となる事は論を待たない。
特に札幌市の場合,積雪寒冷の自然条件と第3次産業の特化した産業構造の特殊性から所謂民生用エネルギーの消費ウエイトが高くその安定確保は,最も枢要な問題であり,同時に,エネルギー消費の増大がもたらす大気汚染・熱汚染等の環境破壊を如何に回避するかと云う問題も忘れてはならない重要かつ困難な課題である。
 地下鉄廃熱利用による地域熱供給事業計画は,この様な時代の要請を受けて生まれたものであり.代表的都市型廃熱である地下鉄廃熱を回収・昇温し, 現在再開発事業が進められている国鉄札幌駅北口地区に供給するという事業で昭和61年7月1日に事業主体である株式会社札幌エネルギー供給公社が設立され,昭和64年度の営業開始に向け建設計画が進められている。
 本事業は, その省エネルギー効果は勿論のこと,都市環境の整備,都市の活性化にも大きく貢献し,また,21世紀にふさわしい都市エネルギーシステムとして先導的役割を果すものと期待されている。

2. 事業化までの経過
(1) 地下鉄の省エネルギー化と都心駅の高温化札幌市の地下鉄は,昭和46年12月の南北線の営業開始以後,逐次整備が進められ現在2路線31,6kmが営業しており, 更に現在第3番目の路線として東豊線の建設が昭和63年度の開業を目指して進められている。この様に順調に整備が進められている地下鉄もオイルショック以降は建設費,経常費が高騰したため, その経営環境は非常に厳しく,経営効率改善のため徹底した省エネルギー化が進められている。 この内最も大きな省エネルギー効果を発揮した節電対策として駅舎換気システムに対する可変風量方式の導入が挙げられる。
 これは従来固定風量で運転されていた換気装置にインバーター又は電磁カップリング方式を用いて風量をラッシュ閑散に応じて調節し換気用電力を大幅に節減するもので,昭和52年の東西線延長部の営業開始を期に,東西線全駅に導入され,前後して電力料金も値上げされたため,実績としても年間約2億円の電力費節減効果をもたらした。
 しかし, この可変風量方式の導入は,駅舎内の高温化を助長するという問題点があった。
 即ち,地下鉄駅舎の換気装置は新鮮外気の取り入れという衛生上の目的の外に駅舎内の発熱を除去するという目的を果している訳であるが,換気量の削減はこの放熱効果を減ずることとなるためである。
 特に乗降客の多い都心駅では, この可変風量方式の導入以前より夏季の構内温度の上昇が著しく,乗客サービスの面から早晩冷房化が必要と考えられていたが,省エネルギーを目的とした可変風量方式の導入は, この冷房化計画に拍車をかける結果となった。
 都心駅の冷房化については大きな下記の問題点が三つ存在していた。

そこで, これ等の問題点を一挙に解決する方策として地下鉄廃熱の有効利用という考え方に到達した。

(2) 廃熱利用技術の進歩と国鉄札幌駅北口再開発計画
 このようにして地下鉄廃熱利用による地域熱供給事業構想が生まれた訳であるが, この構想を実現させるためには高度の廃熱利用技術と熱需要家の存在が必須の条件と考えられた。
 前者については, 従来の廃熱利用技術は産業プロセス廃熱等の比較的高温の廃熱利用技術が主流であり,地下鉄廃熱の様な低温分散型の廃熱利用技術はこの構想がまとめられた時点では, 末だ実用に耐えるものが存在していない状況であったが,専門メーカーの全面的協力を得てシステム開発に取組んだ結果,「廃熱回収システム(駅舎側),昇温システム(エネルギーセンター側)共ヒートポンプを用いた高効率システムて構成し,駅舎側(交通局)には駅舎冷房化と,換気動力の削減,エネルギーセンター側(熱事業者)には高効率熱製造システムの実現と双方に充分なメリットを提供し得るシステムとし,そのメリットに応じ双方が妥当な建設費,経常費の費用分担をすることで技術的・経済的に成立させ得る。」との結論が得られた。これは,技術的にはヒートポンプの高効率性と冷却・加熱が同時に行われる特性を巧みに利用したシステムで従来困難とされていた低温廃熱利用を可能とする点で充分革新性が認めろれるものであった。
 後者の熱需要家については,条件としては地下鉄都心駅に隣接すること,熱需要密度が高いことが必要であるがこれについては,最適地として国鉄札幌駅北口地区が選定された。この地区は札幌市が昭和53年度に「札幌駅周辺地区整備構想」として策定した60haのうち最重点地区として昭和55年度に高度利用地区に指定された20haの区域で,国鉄線の高架化や地下鉄新路線の建設等近隣の都市基盤整備を背景として将来飛躍的に発展することが期待されている地区である。
 この様にして基本システムと事業化条件がほぼまとまった時点で本計画は交通局から市の企画調整局の担当となり,昭和57年度以降は市の事業として本格的に取り組まれることとなった。

基礎調査実施
 
交通局より事業計画を引継いだ市企画調整局では計画をより確実かつ具体的なものとするため昭和57年度の事業として基礎調査を実施した。
 この調査は計画の基礎となるシステムの実現性と革新性を客観的に確認することを主目的とし併せて都心駅の熱環境熱需要量,建設費収支計画等につき基本的検討を行ったものであった。

事業化可能性調査の実施と事業化決定
 基礎調査の結果を踏まえ昭和58年度には事業化可能性調査が実施された。
 この調査によって実現可能性が確実であることが確認され市の事業として実施されることが正式に決定された。事業実施については独立した事業主体を設立することとし,関係団体との協議の結果, 市が中心となり北海道電力,北海道ガス等の出資により昭和61年7月1日に株式会社札幌エネルギー供給公社が設立された。

3. 事業計画の概要
(1) 熱供給区域
 国鉄札幌駅北口再開発地域(20ha)
(2) 熱需要計画
 熱需要量については,供給区域における建屋の最大延床面積70万m2とし,昭和76年度までに, この50%に相当する35万m2のビルが建設されるものとし上記のように想定した
(3) 熱供給システム概略
 このシステムは,地下鉄熱回収部とエネルギーセンター設備との二つのシステムで構成されている。

ア 地下鉄回収部の機能

イ エネルギーセンター設備の機能

(4) 本熱供給システムのメリット
 地域熱供給は, システムの如何に関りなく一般的に省エネルギー,大気汚染防止,都市美観の向上等多くの特長を有しているが,本システムの場合はこの他に下記の様なメリットが挙げられる。

ア 地下鉄側メリット

(a) 駅舎高温化の歯止めができる。
(b) 駅舎冷暖房,給湯も可能で駅舎冷房,暖房,給湯設備の重複投資が防止できる。
(c) 換気設備の可変風量化が推進でき,大幅な省力化が可能となる。
(d) 冷暖房に要するユーティリティ費が不要である。

イ 熱事業者側のメリット

(a) 廃熱を利用することにより,省エネルギ-―ができる。(全供給熱に対する廃熱寄与率は約25%)
(b) 高効率サイクルであるヒートポンプシステムが利用できる。(ボイラー専焼方式に比し約50%効率改善)

4. おわりに
 以上,本事業の成立経過と概要について紹介した。本事業の特色は,従来困難とされていた低温廃熱利用を可能としたシステムにあるが, この様なシステムが成立する事の意義は,本市の様なエネルギー消費構造を有する都市にとっては非常に大きいと確信している。
 今後類似のプロジェクトが試みられる事と期待しているが,本稿が些かでも参考となれば幸いである。
 S62、2 札幌商工会議所産業公害相談室発行
      「あめにてい」

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