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都心交通対策と社会実験について

札幌市企画調整局総合交通計画部
交通計画課 八 柳  寿 修

1  はじめに

 
近年、交通の分野では、住民参加、パブリックインボルメント、社会実験などのキーワードが語られています。これまで一般にはなかなか知られることのなかった(秘密裏に行われてきた?)政策形成や計画の策定段階から、住民や関係者を交えて、事業実施に向けて合意形成を進めていこうということかと思います。
  ここでは、平成9年秋に、札幌市と札幌市都心交通実行委員会が共同で実施した交通実験プロジェクトについて紹介します。

2  都心交通対策実行委員会について

  都心部は、中枢管理機能の集積や業務・商業の中心地として、交通の集中発生の著しい地区と言えます。活発な都市活動や様々な都市機能を可能にしていくためには、円滑な交通を確保していくことが必要です。
  都心交通の課題としては、約4割占めるといわれる通過交通、違法駐車や荷さばき車の駐車など様々なものがあげられ、行政機関だけの取り組みでは、これらの課題の解決が難しいのが現実です。
  このため、都心交通の改善について、行政機関と地元町内会や商店街、運輸業界など関係者において、検討しようと「札幌市都心交通対策協議会」が平成元年に設立されました。協議会においては、約3年にわたって議論が進められたが、関係者間の協力(いたみわけ)により、実施可能なことから対策を行うこととして、具体的な対策が盛り込まれた提言書が平成3年に取りまとめられました。内容としては、通過交通の削減や違法駐車の排除など効率的な道路利用による自動車交通の円滑化、公共交通の利用促進と自動車利用の抑制を対策の柱としています。この提言を受け、実行組織として、平成4年3月に行政機関や都心部の商業者や運輸業者などで構成される「札幌市都心交通対策実行委員会」を設立し、官民一体となった取り組みを進めています。
  実行委員会の運営は、札幌市からの負担金と構成員からの寄付金により行われており、これまでの活動としては、違法駐車の削減に向けた啓発活動、自粛時間の設定などによる荷さばきの効率化の推進、年数回実施する集中キャンペーン(違法駐車防止、自動車利用抑制、公共交通機関の利用促進)、新たな対策に向けての調査研究などを実施しています。

3  交通実験の経緯

  実行委員会においては、今後の都心対策について検討を行ってきました。
  「荷さばきの効率化に関する懇談会」では、効率化を進めるにあたってどのような方策がよいのか、実施にあたってどのような課題があるのかなどについて議論を行ってきましたが、実験として実施可能な、荷さばきできる時間帯と自粛時間帯を設定する「タイムシェアリング」を検討することとなりました。
  また、新たな都心交通を検討するため「都心交通研究部会」を設置し、”歩いて楽しい都心”を実現するため、都心部の魅力づくり、交通環境改善について検討を行ってきました。快適な歩行空間と公共交通機関の調和を図るものとして、トランジットモールが考えられますが、実現にあたっては、市民や関係者のコンセンサス形成が必要なこと、駐車場の出入りや荷さばきなど都市構造の改変が必要なことなどの大きな課題があります。このため、将来的な都心交通のあり方を探るため、トランジットモールなども念頭において、交通実験を行っていこうと言うことで、この中で出てきたのが「新たな歩行者ゾーンの創出」と「都心循環バスの運行」という提案でした。
  そこで、実行委員会では、2つの部会の研究成果を踏まえて、平成9年度の総会で3つの交通実験プロジェクトの実施について決定しました。このため推進組織として、「都心部交通実験プロジェクト推進委員会」と下部組織としてプロジェクトの具体的な内容を検討する3つのワーキンググループを設置しました。
  ワーキングは、行政機関をはじめ学識経験者、商業者、運輸業者、市民などで構成されており、「都心循環バス」については、あらかじめ事務局側で資料や案などを提示するのではなく、参加メンバーが主体的に運行方法や路線、コンセプトなどを話し合って行く方式(ワークショップ)がとられた。座長は北大の高野先生がつとめられたが、毎回、3時間から4時間に及ぶ中身の濃い議論が精力的に行われました。

4  都心循環バスの運行実験

1)ねらい
都心部における利便性の高い交通手段を確保するため、都心部の集客施設(公共施設、商業施設など)と交通結節点(地下鉄駅、JR駅)とを結ぶ都心循環バスの試験的運行を行う。
2)実験の概要(図1)
・運行日 平成9年10月18日(土)、19日(日)、25日(土)、26日(日)の4日間。
ワーキングの中では、自動車利用からの転換を目的に平日に運行すべきとの意見もあったが、運行車両に余裕のある休日に実施することとしました。
・運行時間 9時30分から18時まで、10分間隔で運行
買い物客等の利用を想定して、上記時間帯に設定し、待ち時間が少なくなるよう10分間隔としました。
・料金 大人100円、こども50円。
わかりやすく、低廉なワンコイン(100円)として、通常のバス料金(200円)の半額に設定。また、沿線商店街とのタイアップを図るため、前売利用券をキヨスク、定期券発売所などで発売し、割引などの協賛サービスを受けることができるようにしました。
・路線
ワーキングで様々な意見がだされたのが、設定路線である。今回設定した路線は、「札幌駅前〜大通〜すすきの」を連絡する。限られた車両で高い頻度の運行を行うため、コンパクトな路線にする。バス停間隔を短くする。目的地まで早くあるいはバス停まで短時間でアクセスできるようにするため、右回り・左回りの2路線を運行する。等のコンセプトで設定しました。
3)実験結果
・輸送実績
実験期間中(4日間)の総利用者数は、3,577人で、1便平均では、9.9人となった。運行便数は、当初2路線を10分間隔で約400便を予定していたが、路上駐車や渋滞の影響で遅れが生じ363便の運行となりました。
・利用実態
利用実態としては、札幌駅前と大通ゾーンとの利用が多くなるものと想定されたが、左回りの道庁回り線は、「南1西3」から「札幌駅前」の利用が多く、右回りのテレビ塔回り線では、「札幌駅前」から「大通西1」の利用が多い結果となりました。
・利用者アンケート
利用者は、20、30歳台が5割を占め、利用目的は、「買い物」が62.3%、「娯楽」が20.4%と私用目的がほとんどであった。料金は、100円に設定したが、「妥当」が68.9%、「安い」が25.8%と評価されました。

5  荷さばきのタイムシェアリング実験

1)経緯
都心部の交通混雑の大きな要因として路上駐車の存在があげられ、最近の調査では瞬間路上駐車台数は、2,600台にのぼっています。この中で荷物の集配を行う貨物車の駐車は、車体の大きさから交通への影響が大きいこと、一般の路上駐車を誘発することなどが問題となっています。
荷さばき駐車対策として、都心交通対策実行委員会では、都心部の混雑時間帯において荷さばき作業を自粛する取り組みが行われてきており、物流量の多い大型店を中心に、早朝時に自社の物流センターから一括で納品を行うなどの努力が行われています。
また、実行委員会の中に関係者による懇談会を設置して、可能なことから対策を行うべく、検討を進めてきており、今回の試行実験もこのような検討の中でうまれてきたものです。
2)ねらい
荷さばきのための駐車は、路上ではなく、路外(敷地内、施設内)で行われるのが望ましいが、路外の荷さばき施設等が整備されるまでの間は、現実的な対応として路上を有効に活用していくことが必要となります。「懇談会」では、路上を有効に活用する方法として、荷さばき作業ができる時間帯とできない時間帯に区分する「荷さばきのタイムシェアリング」について検討を進めてきています。このことにより、荷さばき駐車の新たな秩序づくりと一般車両の違法駐車の防止が期待できます。
タイムシェアリングの本格的な実施にあたっては、荷さばき時間における駐車禁止規制解除が必要となるが、実施に向けての課題や問題点を把握するとともに、商店街や運輸業界など関係者の荷さばき効率化に対する認識を一層深めてもらうため、今回試行的に実験を行うこととしました。
3)実験概要 (図2)
・実施時期 平成9年10月22日(水)〜28日(火) ※土日を除く
実施時期については、循環バスの実験と同時期とすることでPR等において、相乗効果が期待できること、年末繁忙期前の通常期であることなどを考慮し設定しました。
・実施エリア
違法駐車防止重点地域(注1)内の主要5路線(南1条線、南2条線、南3条線、西2丁目線、西3丁目線)
*注1 :
札幌市が施行している違法駐車等防止条例で定める地域(南大通〜国道36号、札幌駅前通〜創成川通)
・内容
荷さばき時間は、9時30分〜11時30分、14時30分〜16時30分の午前・午後各2時間。これ以外の時間帯は荷さばきを自粛する時間帯の設定、昼間の自粛時間帯は、路上にセーフティーコーンを設置し、人員を配置し、駐車車両に対し啓発活動を実施。人員は、違法駐車指導員のほか札幌市、商店街、町内会、運輸業界などから動員。啓発活動と併せて、中央警察暑による取り締まりを実施。
緊急品など荷さばき時間帯以外に配達せざるを得ない場合には、幹線道路ではなく中通りで荷さばき作業を行うこととしました。
・効果測定調査
実験の効果・問題点を探るため、路上駐車の状況、駐車場の利用状況の変化を調査するとともに、商店、事業所、運送業者、バス・タクシー運転者へのアンケート調査を行うこととしました。
4)実験結果
・駐車台数の変化
実験期間中は、全体で3割の路上駐車が減少し、車種別では、乗用車類が5割近く減少、貨物車類は、ほとんど変化がなかった。貨物車の駐車は、昼間の自粛時間帯では5割近く駐車が減少していることから、今回のタイムシェアリング実験は、かなり守られたと言えます。
・駐車時間の変化
全車の平均駐車時間は、12.1分から8.5分へと約4分(3割)短縮した。車種別に見ると、乗用車で約4分半(4割)、貨物車が2分半(2割)短縮している。駐車時間短縮の特徴的な時間帯として、午前中の荷さばき時間帯があげられ、貨物車の駐車時間が実験前の14.2分から8.5分へと6分近い短縮となっています。これは、貨物車が路側に停めやすくなったため、ヨコ持ち(路上から建物への移動)距離が短縮されたり、1回の駐車で数カ所へ配送することが減った(こまめに車を停められる)ことなどが考えらます。
・駐車場の利用状況の変化
実験中は、自家用車類の路上駐車の大きな減少が見られたが、実験区域内の主要な駐車場においては実験前に比べ利用台数が2割増加しています。これは、事前のPR、期間中の啓発活動による効果と考えられます。

6  今後の取り組み

 
都心交通の一般的なイメージとしては、大量な自動車の流入による交通渋滞や多くの違法駐車車両などが挙げられます。しかし、最近行われた第3回道央都市圏パーソントリップ調査によれば、前回(1983)、前々回(1972)の調査と比較しても、都心に関連するトリップは、約77万TEと変化がなく、自動車交通の占めるシェアも38.8%(1983)→34.9%(1994)と低下しており、自動車交通は減少傾向にあると言えます。
 都心部の低迷が言われていますが、人口、従業員数、小売販売額などのシェアも年々低下し続けています。都心部における課題は、交通問題の解決とともに、低迷・凋落している都心部をいかに活性化していくかという点にあると考えられます。
 今回、都心部の商業界や運輸業界、さらには市民の参加も得て交通実験を行った訳ですが、交通対策という面だけではなく、都心の新たな魅力づくりといった観点からも、関係者や市民の参加によるこのような取り組みが今後とも必要と考えています。
 今回の実験は、3つのプロジェクトの内、準備が整った2つのプロジェクト(都心循環バス、荷さばきのタイムシェアリング)を秋の同時期に実施したものですが、問題点等も把握しながら、本年実施しなかった「新たな歩行者ゾーン創出」も含め来年度以降もワーキングにおいて検討することとしています。

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