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北海道環境影響評価条例について
(講演要旨)

北海道生活環境部次長  左 部  勝

 

 本日は今年の1月18日から全面施行になりました、北海道環境影響評価条例について、条例制定に至った経緯、ねらい、特徴、条例の手続きの概要などについてお話ししたいと思います。
 開発の究極の目的は、道民の福祉の向上にあることは申すまでもありません。北海道は開道110年ということで開発の歴史も浅く、今後とも道民の福祉のために数多くの開発事業を進めていかなければなりません。一方では、北海道は総面積の約60%が天然林や自然草原であり、雄大な自然景観や緑と水の豊かな湖沼、貴重な動植物が広く分布しており自然環境に恵まれています。また、良い生活環境とは、澄んだ空気、 きれいな水、肥えた土壌、多彩にして数多くの野生動物、この5つがワンセットになっていることが必要で、一つが欠けても駄目だといわれていますが、この意味でわれわれの生活環境は本州に比べて大変恵まれているといえます。この貴重な自然を守り、良好な生活環境を維持することもまた道民の福祉の向上のため重要な課題であります。開発と環境保全とを両立共存、調和させることは道行政上の重要な課題となっております。道は、今迄も環境汚染の未然防止のために公害防止計画の策定をはじめ諸々の施策を行っていますが、この環境アセスメントの制度化も環境汚染の未然防止上有効な方策の一つどあるということから、知事は50年6月、第2回道議会定例会における道政執行方針のなかで、環境アセスメント条例の制定について検討することを明らかにしました。環境アセスメントの制度化は、新しい試みであり、重要な問題でもありますので、50年9月に知事の附属機関である北海道公害対策審議会、北海道自然環境保全審議会に「環境アセスメントの制度化について」諮問しました。国の法制化の動きなどの関係もありましたが、実に2年有余にわたって北海道の将来の環境保全のためということで熱心にご審議を頂き、昨年一月にそれぞれの審議会から知事に対し答申があり、道はその答申を十分尊重して条例案を作成し、昨年3月の第1回道議会定例会に提案したのであります。議会においては継続蕃議ということで、長時間にわたって慎重な審議の上、昨年の第2回道議会定例会中の7月18日に意見を付して原案どおり可決されました。道は、翌7月19日に全国都府県にさきがけて条例を公布しました。その後、条例の施行に必要な規則をl2月l5日に公布、ガイドラインを12月25日に公告するなどしまして本年1月18日に全面施行ということになりました。ご承知のように昭和53年4月から北海道発展計画(53〜62年)がスタートしましたが、これに間に合わすことができたわけであります。
 国の法制化はご案内のように今回も国会の提案がむづかしく4回目も流産かと危ぶまれています。しかし、国の中央公害対策審議会は、4月にも環境アセスメント制度のあり方について答申を出そうとしているようですし、OECD (経済協力開発機構)も5月にパリで環境閣僚会議を開き、環境アセスメント制度の実施を加盟各国に勧告しようとする動きがあり、いまや環境アセスメントの法制化は時代の趨勢であるといえます。
 環境影響評価(アセスメント)とは、どういうことかと申しますと、環境アセスメントというのは外国からの輸入品でありますが、日本の環境庁が「影響評価」と訳したわけで、元来、アセスメントとは、「税金の事前申告」のことに使っており、これからもおわかりのように「環境に関する事項を事前に申告すること」というふうにご理解して頂ければよいと思います。
 環境アセスメント制度は、開発事業が起こす環境破壊を事前に措置するという目的で行うものであり。(1)開発事業の決定や実施に先立って環境への影響評価が行われること。(2)その内容などが公表され、影響をうける地域の住民の方々の意向などが反映ざれることが少くとも確保されるような手続きをもりこんでいることが必要とされています。
 北海道の環境影響評価条例は、本道の環境を管理する責任をもっている知事が、その責任において処理すべき事項を中心に規定しており、 4章41条の本則と附則からなっております。
 第1章総則は、目的、定義及び開発事業の責務、第2章はこの条例のメインをなすもので、環境影響評価の実施について規定しており第1節は民間が事業実施主体の場合、第2節は道が事業実施主体の場合、第3節は国の機関等(国、市町村、公社、公団等の公法人等)が事業実施主体の場合、第4節は特例として特定地域の場合の4つに分れています。第3章は環境影響審議会についてであり、第4章は雑則で条例の運用上必要な事項について規定しています。
 まず、条例第1条に目的として「この条例は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある開発事業について、環境への影響を適切に評価するための手続を定めることにより…」とありますように、この条例は規制条例ではなく手続条例であることを特に強調しておきたいと思います。
 次に、条例の特徴的な点について申し上げたいと思います。
 第1点は、開発が環境に及ぼす影響について、環境影響評価書等の資料を公表して、地域住民とか、市町村長などの意見を十分把握して、環境影響に関する知事の見解をとりまとめるとともに開発事業者や開発事業を許認可するところへ伝えて、それぞれの責任で行う開発事業の実施や許認可書を適正に行って貰う、そのための手続を規定しているということであります。
 従って、規制、許認可のためでなく、開発事業者や許認可を行うものの意志決定の判断材料の一つを提供するための手続法であるということであります。
 第2点は、環境を限定してとらえているということであります。環境については、自然環境、社会的環境、経済的環境、文化的環境など、われわれの生活に係り合いのある全ての環境としてとらえることが望ましい訳ですが、科学的、客観的に環境影響評価を行うことがなかなかむづかしいので、この条例でいう環境とは第2条の定義から分かりますように、公害の防止及び自然環境の保全に係るものということにしています。公害とは、公害対策基本法でいう大気、水、騒音、振動、悪臭、土壌汚染、地盤沈下などいわゆる典型7公害をいい、放射物質にかかるものは除かれています。
 第3点は、対象事業についてでありますが、「環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業」ということで、条例第2条第2項で特定開発事業として8つあげておりますが、さらに規則で定める要件として地城的或は事業の規模により限定してとらえているということであります。地域的なものとしては、規則第3条の別表第2の(注)書きにありますように「住宅地等」と「特別地域等」とがあります。「住宅地等」とは都市計画法により指定された都市計画区域で、用途地域、これは住宅専用地域、住居地域、商業地域など8つに区分されていますが、このうち工業地域、工業専用地域を除く地域であります。また、「特別地域等」とは、自然環境を保護すべき地域ということで、自然環境保全法、自然公園法などで指定された地域であり、これらの地域等で行われる特定開発事業が対象となるのであります。
 事業の規模としては、例えば、特別地域等における道路の新設は、幅員が5.5m以上で延長が5,000m以上のもの、住宅地等における道路の新設は、車道が4車線以上で延長が、2,000m以上のものを対象とするなど、比較的大規模なものをきめています。このように、環境影響評価の対象事業を地域或は規模の上から限定しています。
 第4点は、何等かの基準とか水準を設けて開発事業そのものを規制することにはしていないということであります。
 第5点は、開発事業が環境に与える影響について、知事の見解をとりまとめるに際し、知事の附属機関である北海道環境影響評価審議会に諮問し、専門的、中立的立場からご意見を頂きそれを十分尊重することとしていることであります。
 第6点は、関係市町村長から意見を聴くなど、その役割と機能を十分尊重することとしていることであります。
 第7点は、環境アセスメントをしたあとのアフターケア、事後措置につき、この条例で特に規定しておりませんが、関係法令等で十分措置することとしていること、また、条例の違反に対し、罰則を課することなどの規定は一切設けてないということであります。手続違反に対し罰金を課することなどのほか、手続遵守の実効性を確保するために事業の着手制限などが考えられますが、この条例の運用はガラス張りの中で行われることでもあり、事業者の善意を期待して、このような強制的な規定は設けなかった訳であります。なお、このことについては、さきに申し上げました道議会の議決にあたっての付帯意見の中に、「この条例による制度を尊重しない悪質な開発事業者については、その事実を公表するなどして実効性が確保されるよう十分配慮すること」とあり、道としても悪質なものについてはこれを公表することとしてあります。いづれにしても開発事業者の善意を基本に、行政・地域住民ともども信頼性を基盤として、この制度を運用することが、最も肝要なことであると思います。次に環境アセスメントの手続きの概要についてご説明します。資料の「北海道環境影響評価条例に基づく環境影響評価の手続きフローチャート」をご覧頂きます。手続きは民間、道、国の機関等、それから特例として特定地域の4つの場合がありますが、民間の手続きのフローチャートが代表的な基本的なものといえます。

第1、民間が事鎌主体の場合

電源の開発、住宅団地の開発等がありますが、その場合の手続きとしては、

(1) 開発事業者は、開発事業の実施に先立って環境アセスメントを行い、これを環境影響評価書として取りまとめ、知事に提出する。
(2) 知事は、開発事業が提出した評価書の概要を告示し、原本を30日間公衆の縦覧に供すると共に、これを関係市町村長に送付する。
(3)関係地域の住民は、告示の日から起算して45日以内に知事に意見書を提出できる。
(4) 知事は、評価書の内容の周知を図る必要があると認めるときは説明会を開催する。
(5) 知事は、関係市町村長及び北海道環境影響評価蕃議会の意見をきいて、審査意見書を作成し公表すると共に、開発事業者及び関係市町村長に通知する。
(6) 知事は、審査意見書を作成するにあたり、評価書の内容について特に意見をきく必要があると認めるときは、公聴会の開催等の措置を講ずる。なお、公聴会では、関係地域以外の住民、或は自然保護団体や学者など必要に応じ、広く意見をきくことができる。
(7) 開発事業者は、審査意見書により、評価書を見直し、その内容を修正する必要があるときは修正して、これを知事に提出し、知事はこれを適当と認めた場合は告示する。

 なお、このフローチャートにはありませんが、条例の第38条に基き、知事は開発事業者が対象事業を行うにあたって、法令等の規定により許認可等を必要とする場合は、その許認可権者に対し、環境アセスメントの結果を勘案して、許認可等を行うよう要請することとしております。

第2、道が事業主体の場合
 手続きとしては、実質的には民間の場合と同様でありますが、環境アセスメントの作成者とそのチェック者が同一であるということから、知事が知事に意見書を出すということでなく、「評価書の確定」(右下) ということにしています。

第3、国の機関等(国の機関、市町村、公社、公団等の公法人等)が事業主体の場合

 その手続きとしては、

(1) 知事は、国の機関等が対象事業を行おうとするときは、国の機関等に対し、評価書又はこれに準ずる書面の提出を要請する。
(2) 知事は、国の機関等から評価書等提出があったときは、国の機関等と評価書等の縦覧その他の手続について協議する。
(3) 知事は手続きについて協議が整ったときは、民間の場合と同様の手続きを行い、環境影響に関する意見をとりまとめる。
(4) 知事は、その意見を、国の機関等に通知す ることとしています。

第4、特定地域の場合
 大規模な地域開発計画においては、工業団地の造成その他各種の開発事業を一体として整備することとなるため、事業の種類、規模や事業主体が多様であり、その開発も段階的に進められることになりますので、この条例では

(1) 知事は、各種の開発事業等が総合的、計画的に行われ、環境アセスメントを一体として行うことが必要であると認める地域を、特定地域に指定し、この地域の環境アセスメントを実施する。
(2) 知事は、道が実施主体の場合に準じ、住民手続き等をとる。
(3) 開発事業者は、特定地域内で行う個別の開発事業について、知事の求めに応じ、環境アセスメント又は、それに関する資料等を知事に提出する。
(4) 知事は、その内容を蕃査し、既に作成してある特定地域全体の環境アセスメントの内容と照らし適当と認めるときは、その旨及び内容の概要を告示する。(その他の住民手続等を省略する。)
(5) 知事は、特定地域にかかる開発計画の著しい変更等の結果により、必要と認められる段階で、すでに行った特定地域全体の環境アセスメントの再評価を行うとしております。

 なお、現在、特定地域として、苫小牧東部工業基地及び石狩湾新港地域がそれぞれ指定されており、既に行っている環境アセスメントは附則第3項の経過規定によって、この条例によって実施された「環境影響評価」 とみなさレております。
 次に、この条例の具体的な対象事業としては、当面、小樽市東南地域(毛無山麓)の住宅団地、北海道新幹線鉄道の建設、女満別の飛行場建設などが考えられますが、その他電源開発、道路の建設などを予想しております。
 すでに御案内のように、環境アセスメント制度は新しい試みでもあり、その運用をめぐっては、いろいろな課題が予想されます。例えば、規制(取締)法令になれたわが国において、馴染のうすい手続条例という法形式をうまく定着させることができるかどうか。正しい理解のもとに住民の意見を的確にきくことができるかどうか。或は、評価の手法など技術面において、未確立なものがある中で環境アセスメントを実施し、期待どおりの成果が得られるかどうかなどの、手続的にも技術的にも新しい課題があります。これらの課題につきましては、道としては、現在得られる最新最善の知見をもとに、まず制度をスタートさせ、今後の実績と経験を積み重ねながら、制度の見直し検討を行いその充実を図っていきたいと考えております。
 いづれにしても、この条例が適正に運用されるためには、何といっても、道民の方々並びに開発事業者の方々などに、この制度を十分理解して頂くことが肝要でありますので、機会をとらえ懸命に努力をしているところであります。
 最後に、日本の環境行政は、二酸化窒素の環境基準の改定、環境アセスメントの制度化の問題に象徴されますように大きな転換期にあると思います。これからの環境行政は、環境汚染対応型の後追い行政から脱却し、環境をもつと総合的に広くとらえ、環境破壊の未然防止はもとより、住みよい豊かな環境を積極的に創り出し、道民一人一人のために快適な生活(アメニティ)を指向するという、新環境創造型の視点にたって考えていかなければならないと思います。私どもは、現在、北海道の風土にふさわしい「地域環境管理システムのあり方」について、鋭意、調査研究を行っておりますが、将来は環境アセスメント制度もこのような中で、その真価を発揮することができるのではないかと考えています。

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