これからの北海道
松谷建設株式会社
社 長 松 谷 豊 一
(留辺蘂町在住)
北海道は21世紀を迎えるにあたり、どういう方向へ行くべきか、そして公共投資の行方は、どうあるべきかという命題に答えはなかなか出せるものでありません。
しかし、最近この問いに対して、考えざるを得ないのも事実であります。
それだけ事態は逼迫してきていると感じ、避けて通れない。
それで僭越ながら雑感を書いてみました。
まず北海道というのはやはりポイントは一次産業であり、三次産業だと思います。
自給率向上と健康食品
まず、最初に農業というのは、やはりこれからは日本にとって本格的に自給率を高める努力をしなければいけないと思います。輸入食料というのは穀物を中心に全世界において段々欠乏していく、これは紛れもない事実です。
今約60億人の人類が地球にいると言われています、これがやがては70億、80億という風に増えていきます。
過去50年前みたいに世界大戦というものがありません、戦争がなければ、逆に言うとそれぞれの国が、例えば発展途上国といえどそれなりに平和ですから、やはり人口は増えてくるわけです。
その人口の増えてきた人に対してなんだかんだ言っても、みんなでもって食料を配給していかなければならない、消費は間違いなく膨らむわけです。
今まで外貨収入があってその外貨収入で主に石油と食料を買い込んでいた日本がいずれは上手くいかなくなる。
石油も勿論50年とかそういう先には枯渇すると言われてますが、世界の人口が増えると共に、あるいはとなりの中国にしてもインドにしても段々穀物を食べなくなってくる。
肉を食べるようになる、そうすると肉を食べるためには10倍の穀物の生産量が必要になると言われています。
ですから間違いなく食糧不足というのはもう目に見えていると思います。
そういう意味でコメしか自給できない日本はやはり先進国の中でも非常に歪な農業政策をとってきたわけですが、これからはこの33%といわれる自給率を少しでも高めていくしかない。
しかし同時に国民の平均年齢が上がっていき、今まで以上に健康というものが叫ばれてなるべくナチュラルなものを食べる、低農薬の食物を求めていく方向になると思います。そういう意味で北海道の農産物は今でも低農薬野菜に代表されるように、これからの時代に適合していける農業の土壌はぴったりだと思います。
この適合性を重視した基盤整備事業は急がれます。
そして健康食品に代表されるような農産物が新しいこれからの北海道における農業の大きな目標になるのではないかと思われます。
2番目は水産業です。水産業というのもいわゆる栽培漁業が有力なものになっています。皆さんご存じのように遠くまでいってマグロ等をとっているのですが、あちこちのお国でも漁業の技術というのが発達してきている。
どの国も漁探を使うようになり、効率よく魚を捕るようになってきた。今や日本の近海には魚がほとんどいなくなっている。
採り尽くされていききつつあるといったほうがいいわけです。
しかし、北海道の特にオホーツク海、太平洋側は寒流、暖流の合流点であり、冬は流氷がプランクトンを運んでくるので栽培漁業は最適と思われます。
その為の先行投資事業は不可欠です。
過疎地に植林
三番目の林業ですが、林業というのは今まではいわゆる営林という形であちこちにまだ営林署がありますけれども、資源としての木であった、木材製品を作るために木を植えていた。
しかしこれからは、営林もしながら同時にエコロジーという、いわゆる木の持っている二つの性質、一つは酸素を供給する、もう一つはカーボンシンクといわれている炭素貯蔵、つまり木をなるべく使うことによって空気中の二酸化炭素濃度を下げていく役割が見直されてきています。
ちなみにここ百年で0.01%二酸化炭素が増えたといわれている。
この増え方は過去百年でそれくらいなのですが、これからは百年ではなくて数十年単位で0.01%づつ増えるだろうと言われています。
まさにそれは例えばいままで低開発国といわれた国も今や重工業なり軽工業なりにどんどん力を入れている。
もう一つは全世界的な車社会の到来です。
例えば隣の中国には人口が12億人いると言われています。
やがて20年30年のレングスで考えますと、12億が20億になったとして4人に一台、自家用車を持ったとしますと、ざっと計算して5億台と気が遠くなるような台数の車が増えるわけです。そのまき散らす排ガス、これは莫大なものだといえる。
今でさえ日本の西日本においては酸性雨であちこちの木がすこしづつ蝕まれています。
そしてオゾン層が破壊されているということがどんどん進んでいきますと大変なことになってしまう。
今、日本国中で都市部に人はどんどん集まってきているので、空き地はなくなっていることは確かですけど郡部においては反対に過疎化して空き地になっている。
なおかつ明治維新から入植した、例えば宗谷丘陵にしても、根釧原野にしてもいわゆる笹原になったものをそのまま放置している。
明治の初め頃は、こんもりとした森であったものが人間が入植して、笹原にして、今いろんな植林を各セクションでやっているようですが、なかなか元にならない、そういうものを森林化していこう、郡部の過疎地に植林していこう。
今までは植林に、カラマツ等が多かったのですが、混生林にしようという動きがあり、ドイツのグリュンバルトのまねをするわけではないんですけど、きちんとした統制のとれた全道的な視野での植林をしていく。
森林を一方で育てながら、同時にいわゆる間伐をして、必要なものは伐採してそれを資源として活用して地域の木材産業に寄与していくそういうことが求められるのではないかと思われます。
物流も乗せる新幹線
二次産業の育成は、本当は一番いいのですが、二次産業というのは大変難しい、特に製造業というのは、大変難しい時代になりつつある。
簡単に例えば機械の組立工場が出来るとか、加工工場が出来るとか言う時代は、まだしばらくかかるのではないか、少なくとも、中国に例をとっても落ち着いて来るまでには20年位かかるのではないだろうか。
20年位たつと開放政策をとった国を含めて政治体制はどうあれアジアの国々は、物価が台湾や韓国並になるだろうと思います。
その段階ではじめて日本自体もフェアな競争が出来るのではないか、それまではなかなか簡単には二次産業を北海道に持ってくるのは難しい。
ただ、必要であり、例えば一次産業にかなり直結している、薬品関係の産業とか、軽薄短小といわれる弱電産業等は、可能ではないかと思う。
スイスの例を取るまでもなく、精密機械の分野というのは、北海道は可能だと思われます。
ただし一つの条件があります、それは例えば東京における長野みたいにインフラの整備、人間の動きと物流の動き、これをスムーズにさせるということが、必要になってくる。
そういう意味で北海道新幹線というのは、人流の他に物流というものを考えれば、かなり利用価値があるのではないかと思われます。
東海道線新幹線、山陽新幹線のように北海道新幹線を人間だけ運ぶ交通手段と考えないで、東京以北というのは物流も考えるということ、そういうようなネットワークづくりをすれば、北海道というのは違ったものになってくるのではないだろうか。
つまりJRをつかうということは化石燃料の節約になる、間違いなくなる、トラックで一台一台運ぶよりは、エコロジー的にベターだと思います。
アジアのスイス
そして最後の三次産業について考えますと特に観光というものに焦点を当てたとき北海道というのは有望な地域ではないかと思います。
その北海道の観光地の最大の欠点というのはやはり、非常に文化的なレベルがお粗末である。
本州、四国、九州と比べて、最大のハンディキャップというのは歴史がないということです。百年の歴史のある街というのは少ない。
歴史の匂いのする場所は、小樽、函館、松前、江差この辺かと思われる。
あとは、例えば札幌等も一部ありますけども、現在、名所、旧跡として残っている古いものはきわめて少ない。(残念なことにアイヌ文化は痕跡がないほど我々の祖先が消し去ってしまいました)
ではどうするか、方向は一つしかない、全く新しいものを創っていくしかない。
その創るに当たって、今までの、日本人の慣習なり風習なりから完璧に脱皮したものでなければならないと思います。
あえて言えば、本州にある既存の物と全く違う物を創り上げていかなければならないと思います。
それは何かというと第一に、自然背景に配慮した連続性のある景観。
一つには、建物の形を風景にあった形に変えていく、もう一つは、背景の風景に合った色合い、これを考慮していくということが一番大きなキーポイントになると思います。
風景にあう街並みにコーディネイトすることが出来る感覚をもつ人材の育成、(景観コーディネイター)、住民の意識と理解が必要です。
第二にはゴミといわれるものの処理である。
このゴミを出来ればドイツ並にきれいに分別収集して完全に街の中からなくす、旅行者の目から消し去っていく。
景観の中からは、ゴミ、スクラップ、あるいは廃材とか車の壊れたものだとか、建物の朽ち果てたものを完全に消し去る。
そういう努力を官民一体となって道民運動として盛り上げていったらいいのではないか。
その為には急には出来ないかもしれませんがゴミ処理総合5年計画を立てて少しづつ完成される努力をすべきではないか。
そして、どうしても景観と合わない既存の建物やその他の理由で、隠せないゴミに関しては、風景とマッチした樹木を植えて隠してしまう方法をとるべきだと思います。
北海道は周りの山々に沢山木があるものですから、自分の街の、家の周りの木を随分伐ってしまったという経緯があります。
大正時代だとか昭和の初めとかはまだ木が残っていたのですが、第二次世界大戦後坊主になってしまいました。
結果として、屋敷林のある本州の郡部のほうが美しい景観を造っています。
本州の場合は非常に植林が多くて、江戸時代からあるいはその前からご先祖様が植えた木というものがある。
ところが北海道の場合はご先祖様が植えた木というのはない。
ほとんどの地域は明治からしか入植していない。
とりあえず伐ってしまった、その伐ったままに現在に至っている。
それが非常に寂しく、外から丸見えになっている、ごみ、ぼろなどの見たくないものまで見えてしまう、これは観光地としては失格です。
これをドイツみたいに必ずしも常緑樹とは言いませんが樹木でもって、ぼろ隠しをすることによって、随分違った景観造りというものが出来ると思います。
加えて建築物や公共事業において造られる建造物(橋梁、道路、高架橋、WALL等)が景観にマッチしたものを造られたとしますと北海道はそれでなくても天然の恵まれた観光資源をもっているのですから出来上がれば別世界を呈するのではないかと思います。
我々のこの、雄大な大自然、カルデラ、火山、滝、温泉、そして氷河で削られたと思うような、非常にヨーロッパと似た、石狩平野や十勝平野を代表する地形、そしてそこで穫れる美味しい農産物、きれいな川、青々とした緑、そして日本の中においては、人口密度が大変少ないこと、暖流と寒流がぶつかる釧路沖の美味しい魚、オホーツク海の流氷などと大変資質に富んだ北海道、これにゴミのない北海道、そして北方型の個性と文化あふれる美しい景観を創れば、アジアのスイスと言われるようなアジアの人々を魅了してやまない地域になれるのではないでしょうか。
レール・アンド・ロード
次にこの1次産業2次産業3次産業を支える物流とインフラの整備について申し上げたいと思います。そこで1番目の整備は道路で、2番目に鉄道だと思います。
この二つを改良していかなければならない。
まず道路というのは曲がりなりにも舗装延長をのばし、そして、国道なり、道道なり農道なり着々と整備しつつあると思われますがしかし一方で、車輌の増加には追いつかない、交通事故は一向に減らないという難問は依然としてあります。
これから高齢化社会をむかえるに当たって、歩行者、ドライバー年令もどんどんあがっていく。これは、特に郡部において急速にあがっていく。
それをどうするかというと方法は色々あると思いますが、まず第一に、交通事故の起こりにくい道路をつくるしかない。
その為には少なくとも自動車専用道路、ドイツで言うアウトバーンみたいなものを、柱として造っていかなければならないと思います。
そういう意味では開発局が行っている高規格道路というのはまさにその目的に合致したものではないかと思います。
そして、道道といえどもその利用率からして国道以上に実際に使われている道路はやはり、自動車専用道路に限りなく近いものにもっていかなければ交通事故を減らすことは出来ないのではないか。
2番目にはJRの活用です。これは目的は、化石燃料の節約。
やはり、大量輸送できるのはレールだと思います。
レールと道路これを今まで以上にうまく利用できるようにするターミナルを造り、なおかつそれがかなり簡略にすぐ積み替えの出来る工夫をする。
出来れば人間の手で油圧方式で、JRの荷台から重量トラックのトレーラーの荷台にすぐにスライドして積み替えれるようなそういう工夫が出来ればよいと思います。
そうすれば非常に簡単にレール・アンド・ロードを使ったドア・ツー・ドアというものが可能になってくるのではないかと思います。
そのためにも、本州、九州、四国に比べて遅れている本道の自動車専用道路の拡充とJRの軌道改良は不可欠です。
3番目が情報ネットワークの拡充で、電子メールやインターネット網の整備であると思います。
これは、特に北海道においては都市と都市が離れているので非常に有効なのではないかと思います。
つまり情報を即座にリアルタイムにすることによって、産地直結のものを生産したり、あるいはすぐ送ったりする事が出来るということです。
生めよ増やせよ
以上雑感を述べさせていただきましたが、前段で申し上げた通り現状分析の域を出なかったと思います。
しかし、以上の分析をしてみる限り北海道の可能性は無限大といっていいほどあるということがおわかりになると思います。
日本の全体の20%を占める国土はまだ発展途上であり本州と違って、こせこせした慣習に縛られることなく、全く違った物を創り出せるという事も魅力の一つではないでしょうか。
最後に、この健康的で美しい大地、都会のあのごみごみとした汚れた空気が全くない北海道の田舎(過疎地)は子育てに適合しているのではないでしょうか。
今過疎地は、加速度的にその町村の平均年齢が上昇しております。
しかしその、逆手をとって「産めよ増やせよ」運動をしてはどうでしょう、そして地方自治体がその運動をバックアップする。
加えて車を街の中から閉め出して、昔のように街角に子供達の元気な声が聞こえるようになったらどんなにすてきでしょう。
これからの北海道の道民運動は「景観美化運動」と「子供をたくさん産んで育てること」を取り上げたらいかがでしょう。
是非今や第一権力と言われるマスコミのみなさんの応援もお願いしながらここで筆を置きます。