RETURN

          どこをベンチマーキングするか

                         
京 都 大 学
                                  助教授 古 阪  秀 三



ビジョンあっての比較論
 北海道のイメージ。美瑛の景色。キタキツネ。ラベンダー。オホーツク。流氷。四方が海。広大な農地、牧草地、原野。雪。まっすぐな道路。農業、酪農、漁業。北海道に抱く素朴なイメージはこのようなものであろうか。そして、もう少し詳しく北海道を理解したいと考えたとき、よくだされるのが比較論である。
 東京に比べて、北海道は………。
 京都に比べて、北海道は………。
 沖縄に比べて、北海道は………。
 全国平均からみて、北海道は………。
公共投資、県民所得、人口密度、道路の整備状況など、どんな指標をとろうと、他と比べて差は求まり、ある種の特徴をつかむことはできる。ある指標では北海道が勝り、別の指標では劣る。比較すれば有意の差かどうかは別にして、必ず差はでる。比較して、それでどうだという結論はでてこない。たとえば、公共投資は全国平均を上回っている。そうすると、この水準は是非維持したい。県民所得は全国平均を下回っている。これは是非改善して、全国平均を上回るようにしよう。このようなことにしかならない。具体的にどうするのか、この答にはならない。比較とはその程度のものだと観念して利用しないととんでもないことになる。そして、比較をする前に肝心なことは、北海道の将来ビジョンをつくることである。何を優先的に考えるのか、観光か、福祉か、産業育成か、あるいは別のものか。そのためには具体的に何に力を入れるべきか。こういうビジョンがあって初めて、他との比較に意味がでてくる。


航空がF1をマーキング
 では、将来ビジョンはどうやってつくるのか。1つの方法として、ベンチマーキングという方法がある。この考え方は、簡単にいえば、企業や組織の業務の改善、システムの改善などに際して、最もうまいやり方をやっている(ベストプラクティス)と目される企業や組織のやり方を詳細に分析し、自組織の改善に役立てようというものである。ベンチマーキングの対象は、同じ産業・業種・業態、システム等に限らない。広く他産業や他のシステムにもベストプラクティスを求めていくのである。ものの本に書かれていたことであるが、たとえば、米国にサウスウェスト航空という会社がある。米国では航空運賃の競争がきわめて激しく、そのため航空機の整備、経営合理化等による経費の節減が強く求められていた。その削減に失敗すると、会社の買収なり、倒産に追い込まれることになる。そこで、サウスウェスト航空は航空機の稼動率を高め、結果として、航空運賃の価格競争力を高める戦略にでた。航空機の稼働率を高めるためには、飛行場での整備の時間を極力短縮することが効果的である。その短縮のためのベンチマーキングとして、F1レースのピットクルーの作業を取り上げた。わずか数秒のピットストップの間にガソリンの給油、タイヤの交換、マシーンの点検等をこなす作業プロセスに着目したのである。ベンチマーキングの結果、飛行場での整備の時間を相当程度短縮し、会社の利益率の向上に寄与したことである。
 この考え方を北海道の将来ビジョンに当てはめると、北海道にとって現状の問題が何か、将来の理想をどこにおくかの概略を決め、そのためにはどこをベンチマーキングすべきか、なにをベンチマーキングすべきかを考えるのである。


独立を考えると見えて来る
 道路交通網の整備であれば、それが最もうまく機能している都市をベンチマーキングするのも1つの考え方であるし、道路交通網を整備して物流拠点にするならば、その方面の産業なり、地域なりをベンチマーキングするのも1つの考え方である。また、観光を中心にするのであればその方面の産業なり、都市をベンチマーキングすべきである。ベンチマーキングの対象は、日本国内とは限らない。米国かもしれないし、カナダやオーストラリア、シンガポールかもしれない。
 ベンチマーキングの考え方を離れて、もっと大胆な発想から将来ビジョンを考えることも1案である。「北海道が日本から独立するとしたら。」この立場だと、北海道の売りの部分と弱点がより鮮明にわかるであろう。
 いずれにせよ、従来の枠組み、計画手法から一歩も二歩も抜け出すことが必要ではないか。(正月に書いたため、つい筆が滑っています。ご容赦願います。)

RETURN